個人で出来る補修と修理の話

 

 

 

修理とか補修とか、ドールをモノとして扱う事に抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、オーナー自身の手で治してあげる事は大切であります。ただし個人レベルで、どの程度の補修や修理ができるのか?は個人の技量の問題ですので、オーナー自身のスキルの問題と密接に関わりあってきます。無理して失敗するくらいなら、メーカーに依頼した方が賢明かと思います。しかし、簡単に外へ連れ出せる環境ならイザ知らず、家族同居のように簡単に連れ出す事が出来ない環境の場合、少しくらいの修理や補修の技術は身につけておかないと、困る場合が多々でてきます。ところで、修理と補修と違うのか?の問題は・・・、決めていません(^^;←ダメじゃん。

 

 

シリコンの接着はシリコンでしかできない

 

用途として「シリコン」と表示された接着剤は、ホームセンター(DIY店)などの売り場を覗くと、意外に多くの種類が市販されています。しかし、そのほぼ全ての接着剤は、ドールの補修に使うには不向きです。一番優れた接着剤は「ドールを製作した時のシリコンと同一のシリコン」です。ただ個人レベルそれを揃えるのは不可能です。ハニードールで専用の接着剤が販売されていますので、それを利用するのも良いかと思われますが少々高価です(^^;

現在市販されているシリコン用の接着剤として、安価で使いやすく実績があるのは、信越シリコンのKE45です。ユニゾンドールの場合は補修セットの中に同梱されています。それ以外のメーカー製品では同梱されているのでしょうか?昔買ったオリエントドールには小さな糊のような状態で入っていました(これは保存が利かない)。手元にKE45が無いドールオーナーの方!是非お手元に揃えて置いてください。通販サイトで検索すれば直ぐに見つかるはずです。これ以外の接着剤の場合、一時的な接着は可能ですが、そこに曲げ伸ばしの力が掛かる場合、あっけなく接着は剥がれます。全く触らない場所、力が掛からない場所を接着する場合ならば、特に指定はしませんが、たぶんドールの補修をする場所は、何かしらの力が掛かる場所がほとんどかと思われますので、安易に市販接着剤に頼らずにKE45をお求めください。1本持っていれば損はしないと思いますよ。

 

 

原則、色合わせの必要なし

 

ボディーには必ず「色見本」が付属されます。これは欠け(欠損)の補修に使うために、接着剤(KE45)に混ぜて使うための色見本です。裂けと欠けの違いは解りますよね?モデラーであれば当然解る事ですが、これを混同してしまうと無駄な努力が発生します。

「裂け」と言うのは、引き裂かれる状態で、裂かれたモノ同士を合わせれば、元通りに合う場合を指します。

「欠け」と言うのは、裂けと違って、裂かれたモノ同士を合わせてもピッタリと合う事が無く、不足する部分がある場合を指します。

怪我の多くは前者の「裂け」に当たります。裂けの場合は色合わせをする必要はありません。なぜなら欠けている部分が無いからです。欠けている部分を自身の手で追加するために「色あわせ作業」が生まれますので、怪我が「欠け」なのか?「裂け」なのか?の見極めは大変重要です。自分自身、今まで欠けの経験はほとんどありませんし、小さな欠けならば特に色合わせの必要も感じませんので、基本的には色見本を使った補修は、ほとんど必要がないと言い切れます。

 

 

裂けの補修例

 

(上)補修前。私に言わせれば“軽微な裂け”

(下)補修後。 スマン失敗例だった(^^;

定番の「脇裂け」をお目にかけましょう。

これが裂けの初期段階です。「裂け」の怪我で一番多いのが「脇の下」の裂けでしょう。これは肩の回転を脇を開かずに前後させる為に、シリコンが負荷に対応しきれずに裂けてしまうためです。“秘密の小物入れ”(=ホール穴)の裂けも多いかと思いますが、それはちょっと写真を載せられないかな(^^;。補修の理屈は同じです(笑)。

 

裂けの場合は上で記したように、脇を合わせれば傷口はぴたりと合いますので、爪楊枝などで接着剤(KE45)を傷の全体に薄く延ばすように塗りまして、いったん脇を閉じた後に再び脇を開いて、余分な接着剤を除去します。その後ふたたび脇を閉じて1日ほど動かさないようにしておけば、補修完了です。

コツは、接着剤の量を少なめにする事でしょうか。ベタッと塗らないで、少しずつ傷口を薄く薄くコーティングする感じで、接着剤を延ばして塗ります。はみ出した接着剤も焦らずにすくい取る感じで除去すれば、上手く行くと思います。多少残ってしまっても、見えない部分ですからほぼ大丈夫です。

 

左上の写真は、裂けの状態。

左下の写真は、傷口にKE45を塗って補修した状態。

 

はっきり言って!これは失敗例だ。傷跡が目立ってしまっている(苦笑)。原因は、はみ出したKE45の除去不足である。じつは3回修正してこの状態だったりする(大汗)。上手く行く時は1回で出来るのだが、チョッと油断すると失敗の連続になってしまうのは私の性格ゆえなので、皆さんは愛情を持って丁寧に補修して欲しい。(←偉そう)

 

裂け補修の理屈は、前に記したように、裂けは部品がピッタリ合う傷ですので、合わせ目に接着剤を満遍なく塗れば良いだけで、厚く塗る必要もないし余分な接着剤は必要ありません。薄く延ばして不要な接着剤は取る、と言う方針を心得て作業をすれば、まず大丈夫です。完全接着までに時間に余裕がありますので、納得の行くまで何度も修正しましょう。

 

使う溶剤はヘキサン

 

シリコンドールに関する接着や塗装には欠かせない溶剤はヘキサンです。

左の赤い缶は、ミツワペーパーセメントの剥がし液ですが、これがズバリ「ヘキサン」です。KE45を希釈できます。シリコンの塗装に使いますが、はみ出した接着剤の除去にも使えますので、先に写真を載せておきます。接着剤のはみ出しについては、それほど神経質になる必要は無いと思いますけど、どうしても完全に除去しないと気が済まない完璧を目指す方は、ミツワペーパーセメント剥がし液が使えます。もちろん専用の「ヘキサン」として売られている製品もあります。拭う場合は綿棒が使いやすいと思いますが、普通の綿棒は毛羽立ちますので、毛羽立たないような綿棒を使ってください。なお揮発性が高い溶剤ですので、マスク着用、強制換気、守ってください(^^;

 

 

眉毛の塗装実例

 

模型関係(モデラー)の趣味を持っている方ならば、吹き付け塗装の機材は揃えてあると思いますが、まったくその趣味がない方には機材の準備が大変ですので、まずは筆でできる「眉毛の再塗装」から説明します。しかしここで書けるのは方法論だけです。ぶっちゃけ、慣れるしかないのが塗装の難しさなので、いきなり大成功する場合もあるし、何度挑戦しても上手く行かない事もありますので、その辺も含めて読んで頂ければ幸いです。もしも『アイドロイドプチマニアックス』(コアマガジン社、平成19年刊:絶版?)をお持ちの方、或いは運良く古本でバックナンバーを手に入れる事が出来た方は、この本を読めば一目瞭然!シリコン塗装について全て詳細に書いてあります。私は当時、立ち読みして速攻買いました!

 

用意するもの

1):筆、模型用の細筆や面相筆を使っています。

2):塗料、画材店やDIY店で手に入るアクリル絵具や油絵具で充分です。メーカー名を書くとボルベインとかリキテックス辺りが手に入りやすいかな?油絵具だったらクサカベでしょう。アクリル絵具と油絵具のどっちが良いか?迷うなら、アクリル絵具が好いよ。

3):KE45上記のチューブ入りシリコン用接着剤です。補修キットに付属している透明なノリみたいなモノがこれですが「期限」がありますので、あまり古いモノはお勧めしません。

4):ヘキサン、上記のミツワペーパーセメントが少量入手し易いです。蒸発速度が異常に高いので、密閉保管が原則です。

5):小皿、100均で買える様な瀬戸物の小皿や、模型塗装で使うような塗料用小皿(パレット)です。或いはキャンプやパーティーで使うような使い捨ての紙皿(しょうゆを入れるヤツ)や紙コップでも大丈夫かもしれませんが、白地の品にしないと塗料を混ぜた時の色味が解りません(苦笑)

6):綿棒、できれば毛羽が立ちにくい高級品をお勧めします。

 

理屈(方法論)

 

アクリル絵具を混ぜて(または単体で)目的とする色を作り、それにKE45を混ぜて「シリコン塗装用塗料」を作ります。この塗料をヘキサンで薄めて筆で塗りやすい程度の濃度にします。筆で眉毛を描き、1日ほど乾燥させれば完成です。文章で書くと簡単だよねぇ(^^;

肝は、KE45を元のアクリル絵具にどの程度加えるか?塗料にどの程度のヘキサンを加えるか?です。KE45をたくさん加えれば粘性が高くなる反面、定着力は増します。ヘキサンをたくさん加えれば筆で塗りやすくなる反面、塗料は薄く脆くなります。如何にしっかりと定着させ、如何に描きやすく薄めるか、こればっかりは経験値の話でして文章で表現し切れないんです・・・。

 

文章で書けるコツがあるとすれば、眉毛は黒1色じゃない。1回で成功させようとしないで何度も塗り重ねて仕上げるくらいの余裕を持とう、くらいでしょうか(汗)。たぶん美術系の方は強いと思います・・・。

 

でも美術の評価が「2」(5段階評価)だった私でも出来る!

 

座右の銘は「勢いこそ全て!」(^^)v

 

 

 

 

 

まだまだ続きます

 

 

 

2011815日 記

2011916日 追記

201218日 追記

 

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